DXの構造化とRPAの立ち位置

1. はじめに

皆さんこんにちは。平均最高気温が2021/8/25~8/31は33度なのですが、9/1~9/5は21度です。

気温の変化で体調が悪くなることが多いので、皆さんご自愛ください。

ちなみに私は対策として、ランチ後のファミリーマートのカフェラテをアイスからホットにしました。

 

さて、今回はDXとRPAという話をします。

DXのひとつのテーマとしてRPAが注目されている、RPAで作業を自動化してDXを推進しよう!といった話はよく聞きます。

しかしDXの全体像を把握し、その中でのRPAの立ち位置、役割を把握し、DXでRPAが有用なツールになりえるといった話はあまり聞かないように思います。

なので今回はDXの全体像から求められるシステムを構造化し、その構造でのRPAの立ち位置について考察しました。

以前も弊社のコラムにてDXとRPAの関係について触れていますので、こちらもご参考にしていただければと思います。

 

こちらの記事を読んでいただくと、DX推進の中でRPAツールが有用であると認識する参考になるかと思いますので、ぜひご覧ください。

 

1-1. DXとは

DXの定義を調べてみると多くの表現があり、どれを正とすればよいか迷ってしまいます。公式な定義として「経済産業省のデジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を参考にします。DXは以下のように表記されています。

DXとは、企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」※ 第3のプラットフォームは、その情報基盤として「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」「クラウド」の4要素です。

なるほど、よくわかりました。この状態でDXを推進しよう!と考えたところで、どこから始めればいいのかわからなくなるのではないでしょうか。またこの定義からRPAツールとの関係性も見えてきません。

この記事では、DXを構造的に解釈し、その中で今求められている課題をいくつかピックアップし、その中でRPAツールがどういった役割を担っているのかを考察しました。

 

1-2. DX推進で求められること

経産省で挙げられた定義より、DX推進で求められることは、以下の3点だといえます。

 

外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化への対応

昨今様々な仕組みやサービスが開発され、人々が求める価値のライフサイクルも年々短くなっています。

そういった外部の劇的な変化に柔軟に対応することが今後求められます。

 

内部エコシステム(組織、 文化、従業員)の変革を牽引

今まではITのことは専門家に聞けばすべて解決するので、深い理解は必要ないと考える組織や文化のある会社は少ないのではないでしょうか。DXでは全社員一人ひとりがDXを理解し、推進することが求められます。

 

第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、 新しいビジネスモデルを開発

最新の技術を最大限活用し、社内外のデータを活用して、新しいビジネスモデルを開発することが可能になります。

そのためにも今まで以上のあらゆるデータを収集し、活用するためのITシステムが求められます。

 

2. DX開発の構造的解釈

2-1. DX推進で求められるITシステム構築

DX推進において求められるITシステムは、今まで以上にあらゆるデータを収集し、新しいビジネスモデルを開発することが求められます。

ITシステム構築において、具体的に何が変わっていくのでしょうか。

DXのシステムと従来のシステムは主に開発目的、改善年数、システム規模に違いがあります。以下にまとめました。

評価項目

従来のシステム

DXのシステム

開発目的

運用時に発覚した課題の改善

 新しい技術の誕生に伴う非連続な環境変化に伴う改善

改善年数

3~5年のスパンで現状を改善する積み上げ型

 10年ほどの長期的な視点で大きなビジョン

システム規模

スタンドアロンのシステム

社内外のシステム同士の情報のやり取り、活用

 

まとめますと、DXでは環境変化に対応しつつ、長期的なビジョンで様々なシステム同士の情報を統括するシステムが求められるといえます。

 

2-2. DXのITシステム開発における7階層の論理モデル

DXでのITシステムの全体像を把握するために以下の7つの論理モデルを考えます。

各層の名前

概要

チャネル層

ユーザーとサービスとの最初の接点となる部分の階層。パソコンやスマートフォンなどの人が直接関わるものや、コールセンターなどの顧客サービスが該当する。顧客へのサービスを提供する機器や空間。

UI/UX層

ユーザーが利用するサービスのインターフェース部分の階層。アプリケーションのデザインやテキストなどのUI(User Interface)や、サービス利用体験そのもののUX(User Experience)を指す。音声認識やAR(Augmented Reality 拡張現実)、VR(Virtual Reality 仮想現実)、3Dグラフィックなどのインターフェース

デジタルサービス層

顧客や一般消費者が利用するサービスを提供する階層。デジタルITを実現する。迅速なサービス開発やシステム変更の容易さ、柔軟性の高さが求められる。APIなどの技術を利用した疎結合な構造をとるのが望ましい。

サービス連携層

デジタルサービス層とビジネスサービス層、自社システムと外部企業のシステムとの連携を実現する階層。他の階層からの接続を受け付けるゲートウェイのような役割を果たしている。

ビジネスサービス層

社内ユーザが利用するサービスを提供する階層。コーポレートITを実現する階層。企業の基幹系の業務サービスなどが該当する。レガシーシステムの刷新が必要そうに思えるが、実際には完全に新しいシステムに置き換える必要はない。DX実現のためにはデジタルサービス層との連携強化がカギとなる。

データサービス層

社内外のデータを収集・蓄積し、データ同士のつながりを手掛かりに、新たなビジネスチャンスやデータ価値の創造を実現するための階層。他の層から様々なデータを収集・蓄積し、加工分析して活用する。今後は将来的な拡張性や維持管理などの観点が必要になる。「データ分析に必要なプロセス」「扱うデータの構造」「データの処理方式」などを元に、自社で必要な機能要素を事前に洗い出して整理しておくとよい。

データプロバイダー層

データサービス層につながる、データの源泉となる階層。データを集める対象はパソコンやスマホだけではなく、デジタル化されていなかった工場など様々な施設の情報が求められている。一般に、デバイス類を収集したデータをそのままクラウドに送信すると大容量の通信回線が必要になってしまうので、そのため、IoTシステムで収集したデータを処理するエッジが必要になってくる。

 

3. データ連携層でのRPAツール

3-1. データ連携層の課題、疎結合なシステムでのデータ活用

7つのアーキテクチャの1つである「データ連携層」はなシステム同士の情報を統括するシステムを構築するうえで重要な役割を果たします。

従来のシステムのデータ連携層における課題は主に「レガシーシステムと最新システムの連携」、「コーポレートITとビジネスITの連携」が挙げられます。

 

レガシーシステムと最新システムの連携

レガシーシステムとは、過去に開発されたシステムで、仕様書がなくなってしまった、仕様をすべて把握しているエンジニアがいない、古い開発言語を利用しているため開発者が見つからないといった問題を抱えているシステムです。システムを作り直すのは多大なコストと時間がかかるためすべて作り直すことがベストな解決策とは限りません。

DXを推進するためにもこれらのレガシーシステムを最大限利用し、最新システムと連携することが必要です。

 

コーポレートITとビジネスITの連携

コーポレートITとは社内の情報を管理するITであり、ビジネスITは社外に提供するITです。

コーポレートITは社内の情報を常に管理し、活用することが求められるため、安定性が求められる反面、すぐに大きな変更があるわけではないシステムです。

ビジネスITは社外にサービスを提供するためのITで、常に変化が求められるシステムです。

これら二つのITは相反の性質を持つために作りが異なる場合が多いです。DXでのデータ連携層ではこの2つのITの連携を深めることが求められます。

 

データ連携をシステムで行わない場合は、手作業で情報を操作する必要があります。

対向システムにログインして、画面上の値を作業PCのエクセルに記載する。

紙媒体の情報をエクセルに転記する。

お客様から受け取ったエクセルをWEB上で入力する。etc...

これらの作業はシステムの変更は必要なくシステム間のデータ連携が可能ですが、手作業ですのでミスが発生する。単純作業でモチベーションが上がらない。時間的制約で扱える情報量が限られる等課題は多くあります。

 

そこでデータ連携層におけるこれらの課題の解決手段としてAPI連携とRPAツールが注目されています。

 

3-2. RPAとAPI

API連携とRPAツールの特徴を記し、比較を行いました。

 

API連携

API連携を利用することで、複数のシステム間でデータのやり取りを簡易的に行うことができ、複数のシステム間でデータの二次利用が可能になります。

自動化した際の速度や精度も高く有用です。また高度なセキュリティを構築することも可能です。

社内のコーポレートITをAPI対応できれば、ビジネスITとの連携も安定して行うことができます。

しかし、APIを使えるシステムが多くない欠点があり、コーポレートITやレガシーシステムへの活用等は難しい場合があります。

また、開発コストと時間がかかります。

 

RPAツール

RPAツールで作業を自動化し、マウス操作やファイル操作など、PCに向かって行う手作業を自動化できます。

PCにツールが入りさえすれば、人が手作業で行うことをほとんど再現できるので、多くのシステムに応用できます。

また開発コストが低い点、非エンジニアが見ても理解しやすい点も有用です。

レガシーシステムやコーポレートITの画面操作を復元し、自動的にほかのシステムとデータをやり取りすることができます。

しかし、動作が不安定な場合があることや、速度が遅い欠点もあります。

 

評価項目

評価項目概要

API

RPA

コスト

開発に必要な費用の低さを評価します。

×

安定性

システムの動作の安定性を評価します。

×

堅牢性

操作する情報のセキュリティの高さを評価します。

移植性

他の環境への移行のしやすさを評価します。

×

外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化への対応

各システムを導入することへのモチベーションの高さ、新しい技術としての認知度を評価します。

内部エコシステム(組織、 文化、従業員)の変革を牽引

非エンジニアへの理解のしやすさを評価します。

×

第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、 新しいビジネスモデルを開発

様々なデータの活用しやすさを評価します。

 

以上のように整理すると、RPAツールはAPI連携と比較して、セキュリティや安定性に難はあるものの、安価で始められ幅広いデータ連携が可能だとわかります。

またDX推進のための3つの要素を満たしたツールであるといえます。

 

4. 終わりに

RPAツールは、DX推進のためのシステム開発における様々なシステムのデータ連携層で使用される一つのソリューションであり、

DX推進に必要とされる、組織/人材の確保、柔軟で迅速なシステム開発の観点を満たしています。特に比較的安価で早く実装できるため、DX推進のスモールスタートとして非常に有力なツールです。

DX推進のスモールスタートとしてRPAが有力だとわかりましたが、課題はAPIとの比較でも最低限以下の3つは考えられます。

・安定して起動すること

・セキュリティが完全なこと

・柔軟に様々な環境で動作すること

 

これらをクリアすることでよりDX推進は進みます。

弊社では、上記の課題に注力しながら、DXのスモールスタートとしてRPAサービスを提供しています。

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