自治体へのRPA導入事例
はじめまして。RPA事業部の松井です。
「働き方改革」の流れを受けて、多くの企業がRPAによる業務の自動化に積極的に取り組み受注案件が増えてまいりました。
最近では、地方自治体など官公庁での導入も少しずつ始まり、RPA事業部でも地方自治体へのRPA導入のお仕事をさせていただくことがあります。
そこで、今回は地方自治体がRPAによる働き方改革に踏み切ったお話をしようと思います。
地方自治体のRPA導入状況
まず初めに、地方自治体のRPA導入状況についてお話していきたいと思います。
現在市場では、RPAの導入事例が急激に増えている一方で、地方自治体では導入事例がまだまだ少ないのが現状です。
なぜ、地方自治体は導入事例が少ないのでしょうか。
導入事例が少ない原因はいくつかありますが大きな理由は2つ挙げられます。
第一にRPA導入のための予算確保が困難であること。
地方自治体の場合、民間企業とは異なり予算を住民から徴収している税金から組まなくてはなりません。
そのため、多額の予算をRPA導入のために確保することが困難な状況となっています。
第二に地方自治体の業務の中には、業務の特性上まだ紙ベースの業務が多く存在していること。
皆さん、役所での手続きを思い出してみて下さい。
何かと申請を行う手続きの際には、手書きの申請用紙を記入し、窓口で申請を行う場面が多いと思います。
このように、地方自治体の業務は、いまだに署名や住所を手書きで行った紙による申請手続きが中心のため、電子データ化されていないものが民間の事業に比べて多い状況にあります。
これらの理由から、多くの地方自治体がなかなかRPA導入に踏み切れていないのが現状です。
そんな中、RPAの導入に踏み切ってみた自治体
地方自治体の導入状況でお話したように、なかなかRPA導入に踏み切れない自治体がある一方で、RPAの導入に成功した自治体があることをご存知でしょうか。
ある地方自治体では、自治体の財政難に伴い、人員の大幅削減をした結果、業務が回らず職員の残業が急増したことで働き方改革どころではなくなってしまいました。そこで、この状況を打開するには何が必要か考えた結果、こちらの自治体は2018年からRPAの導入に踏み切りました。
踏み切りましたと言っても、こちらの自治体ではRPAの導入に充てられる予算が当初はゼロであり、さらに、地方自治体での導入事例が少ないという大きな課題を抱えていました。
それではどのようにRPA導入を成功させたのか
こちらの自治体ではまず、職員へのヒアリングとベンダーとの話し合いを重ね最適なツールの選定を行いました。RPAとひとまとまりにいっても、様々な特性を持つサービスが複数存在しています。業務で自動化したいことを洗い出し、ツールの選定を行うことはどの業務自動化する場合でも非常に重要です。
次に、自動化対象の業務を絞りこみました。
すべてを同時に自動化しようとすると、課題が堆積してスムーズな開発や稼働の実現が困難になります。
そこで、電子データ化が進んでいたり、業務フローが明確に決まっているものなど自動化に適した業務を絞りこみ検証を行うことで、自動化によりどのくらいの効率化が実現でき、またどのような課題があるのかを十分に把握するように努めました。
検証を通して見えたもの
検証を通していくつかの課題が見えてきました。
まず、RPAの導入にあたり業務フローを確認してみると、業務のマニュアル化が進んでいないものや、懸念していた電子データ化されていないものが多く存在しました。これは、職員の配置替えサイクルが早いことで業務が属人的であったり、マニュアル作成の時間が割けないために生じており、自動化するにはまず業務フローの洗い出しが必要となりました。
このほかにも、BTCが扱ったケースでも見られた地方自治体ならではの連携システムの多さ、住所氏名の手書き書面の多さも自動化を困難にしていました。特に住所氏名の手書きについては、人が手書きしたものを人が目で見て手入力し電子データ化しているため少なからず誤りが発生する場合もあります。そこで、正しく処理を行うために、手書きデータを読み取り楷書体として表示して確認していただくなど業務面の変更やサービスを間に挟むなどの工夫が必要となりました。(https://www.skycom.jp/product/skypdf/skypdf_for_sign_tablet.phpなど)
開発面以外にも懸念事項はあります。
例えば職員の配置替えが多い自治体のお仕事において、RPAを導入したところでロボットの管理はできるのか、運用コストに問題はないのか、何よりITリテラシーには個人差があるが職員の負担を増やすのではないかなど。
しかしこうした懸念事項はあるものの検証結果から効率化が確認できたことでRPA導入に踏み切ることになりました。
今後の展望
この自治体では検証を通して、業務の効率化が期待できたことで2019年には大幅に予算を確保し、自動化対象を拡大することになっています。
私は今後、今回の事例のように明らかになった懸念事項や課題を解決しRPAの導入に踏み切れる地方自治体が増え、ゆくゆくはロボットが安定して稼働できる体制を整えることで、人とロボットが一緒に働く社会が実現するといいなと思います。
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