業務分析の強い味方、プロセスマイニングとは?
みなさん、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします!
ところで、みなさんは2020年の目標などは立てられましたでしょうか?
私は「今年はより健康に過ごそう!」と思い立ち、食事の記録をはじめてみました。
意外に習慣的に食べてるものの脂質が高かったり、色々と気づきがあって面白いですね。
さて業務効率化界隈で「気づき」を得る手法として近年注目を集めているものといえば「プロセスマイニング」でしょう!(我ながら強引なつなぎですね)
今回の記事では、プロセスマイニングとはどういうものなのか、RPA推進プロジェクトで期待できる効用は何か、といった考察をしていきたいと思います。
そもそもプロセスマイニングとは?
プロセスマイニングとは、システムなどのイベントログから現状のプロセスを分析するアプローチのことです。
プロセスマイニングを使えば、業務利用している基幹システム、顧客管理システムなどのシステムが残す多種多様なログデータを使って、業務の実状を様々な角度から洗い出すことが可能です。
そして、ここから得た気づきを使って、業務改善を行うことが最終目的となります。
プロセスマイニングでの改善の取り組みは大きく3種類、発見、監視、強化に分類できます。
【1.プロセス発見】
収集したイベントログから、自動的にプロセスモデル図を抽出します。プロセスマイニングで用いられるログには、少なくとも「ケースID」「アクション名」「記録日時」の3つの属性があります。この属性とプロセス発見アルゴリズムを使って、ログ同士をグループ化し整列しモデル図を自動で抽出します。
上図のように、ログの羅列から前後関係や処理分岐を抽出し、フロー図に変換するイメージとなります。
【2.プロセス監視】
決められている業務手順と実状がどのくらい適合/乖離しているかをチェックします。
例えば定められた承認プロセスを通っているか、適切な確認が行われているかなど、コンプライアンス遵守のチェックへの活用や
そもそも定めた業務手順が実状に即しているのか、といったチェックを行うことが可能です。
【3.プロセス強化】
プロセスマイニングで見つかった「気づき」を使って、現状の業務手順を強化する試みです。
例えば、ステップごとのタイムスタンプから、業務のボトルネックに気づき、手順を見直したり、複雑な処理分岐を業務整理によってシンプルにしたり、不要な承認手順をカットするなどがあげられます。
総じてプロセスマイニングの特筆すべき特徴は、イベントログという客観的事実からファクトベースで業務を捉えた上で改善のアクションを取ることができる点です。
なお蓄積されたデータから様々な分析手法で洞察を得るという意味で、「プロセスを対象としたデータマイニング」と言われることもあります。
ただしプロセスマイニングはあくまで「分析のアプローチ」という点に注意が必要です。
分析結果から業務の本来あるべき姿(=ToBeモデル)を描き、改善するための具体的なアクション(例えば見つかったプロセスをRPA化する、業務整理をするなど)を取ることで、はじめて導入効果が出ます。
手法が目的化しないためにも、ToBeイメージを意識してプロセスマイニングに取り組むと良いかと思います。
RPA推進との親和性
ではRPAにとって、プロセスマイニングはどのような効用があるでしょうか。
まず考えられるのがRPA導入時の効用です。
多くの企業様がRPA導入にあたって「導入成果の算出が難しい」「期待したROIが出ない」といった悩みを抱えています。
(参考)キーマンズネット|RPAの導入状況(2019年)/前編
この悩みの原因には「そもそも導入前の業務工数を定量的に捉えられず、どれだけの効果があるか比較できない」「業務の実状を掴み切れないままRPA化に踏み切ったため、開発コストが思った以上に高くなってしまった」「業務のうち現実的にRPA化できる工数を把握しきれないまま、期待だけが先行し数字だけが独り歩きしてしまった」など、現状業務の分析不足に起因するものも多くあるかと思います。
裏を返せば、RPA導入における現状業務の分析は、プロジェクトの成功/失敗を分ける重要なフェーズであり、正確に現状業務を把握することは、それほど難易度が高い作業であると言えます。
プロセスマイニングを用いれば、ログの記録日時などから、かなり精度の高い工数を把握することが可能です。
また発生する例外処理などが、あらかじめ分かりやすく見えるため、作る前にRPA化の難易度を予測することもできます。
つまり、客観的で現実的な視点を持った上でロボットの開発に取り組む事が可能になります。
さらに導入後のフェーズにおいても、プロセスマイニングの活躍の機会は多くあると考えられます。
RPAが正しく活用されているか、RPAがどのくらい業務に寄与しているか、などのパフォーマンス監視や
ロボ導入後のログを更にマイニングすることで、残ってしまったボトルネックに気づき、更なる最適化を行うことも可能です。
もちろんプロセスマイニング自体の導入コスト(ツール選定や下準備)も勘案する必要はありますが、導入できるのであれば、RPA推進の心強い指標として活躍が期待できます。
プロセスマイニングツール
プロセスマイニングを行うにあたって、ツールのサポートは必要不可欠です。
具体的にはプロセスマイニングツールは、以下のような機能があります。
- イベントログ収集補助機能
- プロセス検出・ビジュアライゼーション機能
- プロセス分析機能
ツールには例えば下記のようなものがあります。
- Celonis
- ProcessGold
- ABBYY Timeline
- myInvenio
- CICERO
さて各ツールにはどのような違いがあるのでしょうか?
まず一番に注目すべきは、イベントログ収集のアプローチの違いでしょう。
イベントログの収集のアプローチは大きく2つあります。
・PCの操作ログを収集するアプローチ
・ERP、CRMなどのシステムログを収集するアプローチ
PCの操作ログを収集するアプローチ
PC操作ログを収集するアプローチは、ある端末を対象に操作しているアプリケーション名、ウインドウ名やURLをイベントログとして、プロセスマイニングを行うアプローチです。
ツールが提供する常駐ソフトを対象端末にインストールするだけでログ収集が行えるため、導入コストが低いのが特徴です。
このアプローチは、システムログを収集するアプローチと区別し「タスクマイニング」と呼ばれることがあります。
システムログを収集するアプローチ
システムログを収集するアプローチでは、ERPなどの業務システムが吐くログを対象として、プロセスマイニングを行うアプローチです。
既存のシステムのログを使うため、コネクターを仕込んだり、ログを変換する仕組みを準備する必要があります。SAPやSalesForceなどといったメジャーなシステムであれば、ツールがあらかじめコネクターを提供しているケースもあります。
こちらのアプローチは、導入コストがかかる分、システムを対象としているため、全社を対象として部署関係なくプロセス全体を俯瞰できることに大きなメリットがあります。
ログ収集アプローチ以外にも、収集可能なログからツールの検出アルゴリズムでプロセスを抽出できるのか、必要な分析ビューが提供されているか、といった点も選定時の大きなポイントとなるでしょう。
さてBTCのRPAコラムでは、これから何回かに分けてプロセスマイニングの各ツールの紹介を行っていきます。
第1弾のCelonis紹介記事は、2月頃リリース予定です。
お楽しみに!
参考文献
「プロセスマイニングマニフェスト/IEEEプロセスマイニングタスクフォース」
「プロセスマイニング Data Science in Action / Wil van der Aalst著」
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