RPAに続く情シスの救世主を探せ~AIは情シスを救う!?~

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    2019/12/20

みなさん、こんにちは。

令和初となる師走も残すところあと僅かとなりました。年末ただでさえ多忙な中、忘年会などで飲みに出る機会も多いかと思います。くれぐれもお身体にはお気を付けください。

さて、今回はRPA導入の延長線として期待値の高い『AI』の企業への導入、特に”コンピューターの目”ことAIによる画像解析などの事例を、いわゆる企業の「情シス」目線で考えてみたいと思います。

(「情シス」とは企業の情報システム部門や各部門のIT企画担当者などを想定しています)

 

忙しい時こそ無茶振りはやってくる

「なんかさぁ、先端技術みたいなのを使ってイイ感じにITで効果出すことできない?」

 

「はぁ…先端技術でイイ感じ、ですか…。」

 

「そうそう。クラウドとかさ、ビッグデータとかさ、ブロックチェーンとかさ、流行ってるじゃん。

 ああいうの採り入れて事例作って「うちはIT力入れてます!」みたいなの欲しいわけよ。

 なんかさ、IT企画担当としていくつか技術ピックアップして調査してまとめてみてよ。

 そうだなぁ、とりあえず2週間くらいで。」

 

「に、2週間ですか…(無理なんて言えないだろ)。

 …とりあえず情報収集して整理してみますが…、

 たたき台くらいになっちゃいますよ?(予防線)」

 

「オッケーオッケー、じゃあよろしく! 期待してるから!」

 

「…ありがとうございます、失礼します。」

 

上の会話は私が某金融機関の情シスとして働いていた時代の部長との会話の再現です。

「流行りのワード」が多少古いのはそのためです。若干誇張はありますが、割とそのまま再現されていると思います(笑)

 

業務多忙の真っただ中に何故かタイミングよくやってくる上司の「無茶振り」。

IT部門で働く方々にとっては「あるある」なのではないでしょうか。

大抵の場合要求が曖昧で有識者も周りにおらず、何から着手すればよいかわからなくて頭を抱えることもしばしば。

 

「期中のシステム開発を安定的に進める」というミッションを普段担い、見知ったシステムばかりに詳しくなりがちな「情シス」であった私にとって、「先端技術」というワードは大きな悩みの種でした。(そのため企業によっては「情シス」に企画的な仕事を割り当てられないことも多いです。)

 

RPA(Robotic Process Automation)が情シスの「救世主」になる時代は終焉を迎えた?

上司の「無茶振り」には大抵暗黙のうちに以下のような制約が含まれています。

 

1.(少なくとも初めは)コストはかけられない

2.導入負荷が低い(業務全体を変更する必要がない)

3.(できれば早期に)効果がでる

 

そんな経営層や上司からの無茶振り要求に、ここ数年非常に高い水準で応えられていたのが『RPA』です。

低コストで迅速に効果創出が期待でき、やり方次第では大幅な事務フロー変更なども伴わず導入することが可能です。

 

しかしながら、いつもまでも『RPA』が情シスの救世主というわけではなさそうです。

先日弊社コンサルタントの書いたコラムでは、 テクノロジーとしてのRPAの位置づけとしてはガートナーハイプサイクルにおける「幻滅期」に差し掛かったという話を紹介しております。(関連コラム:『急成長のRPAが幻滅期?RPAのこれからを数字で理解する』

 

国内のRPA導入率は従業員数が5001名以上の企業のうち、50%がRPAの本格展開に着手済みという調査結果もあり( 参考コラム:『RPAの導入状況(2019年)/前編(キーマンズネット』)、RPAは大手企業においては既に「導入していて当然」の水準まで普及していると言えます。

 

『AI』は次の救世主か、はたまたターミネーターか?

 

「我が社でも既にRPAは導入した。じゃあ次はどうしよう?」

 

今まさに次なる「救世主」の情報収集中という方も多いのではないでしょうか。

 

恐らくこれから数年間のメインストリームは『AI(人工知能:Artificial Intelligence)』だと言うことは間違いないと思われます。

弊社エントランスでもディープラーニングを活用した画像認識モニターを開発・デモ導入しており、画像認識カメラの導入や(関連コラム:『本社エントランスに画像認識を導入してみた』)、AIによるデータ解析やチャットボット、AI-OCRなど「実現可能な技術」として提案やPoC(概念実証:Proof of Concept)のお手伝いをさせていただく機会も着実に増えています。

 

総務省が発表している「日本企業のAI・IoTの導入状況」によると、「AIを導入済み」と答えた日本企業は14.1%となり、また、ガートナー社の「2019 CIO Survey」では、人工知能(AI)を実装する企業の数は過去4年間で270%増加していると報告されています。

 

「そうは言っても、ウチの会社でAIで何ができるのかよくわからないんだよなあ…。」

 

「AIって莫大な投資が必要になるイメージで、ビジョンが見えない間は手が出しにくいんだよね。」

 

私も過去そうだったのですが、実証されていない技術を業務に導入することのリスクは、組織にとって受け入れ難いものがあることは否定できません。

AIのようになにやら「パンドラの箱」のような印象さえ抱かせる技術であれば尚更です。

 

果たして『AI』は企業や情シスにとって救世主となりうるのでしょうか?

それともターミネーターの世界のように、人にとって脅威となる存在なのでしょうか。

 

 

そもそもAIってなに?

結論から言うと、『AI』について統一的な定義はされておらず、研究者や技術者の間でも『AI』をどのように捉えるかまばらです。

イメージについても人それぞれ、また日米間でも大きく印象が異なっているようです。

 

例えば以下の図表のようにAIのイメージに関するアンケート資料を見るとその差がわかります。

 

(出典)総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年)より作成

 

・「コンピューターが人間の様に見たり、聞いたり、話したりする技術」

  …日米で回答数に差がほぼない

・「人間の脳の認知・判断などの機能を、人間の脳の仕組みとは異なる仕組みで実現する技術」

  …日米で回答数に大きく差がある

 

日本人はAIを「人間」に近しいもののように考え、米国人はある意味で人間を超えるパフォーマンスを持つ「技術」として捉えているように思われます。

日本においては某耳のない青い猫型ロボットのように「まるで人の様にふるまうロボット(AI)」が活躍していますし、映画やアニメ等の影響も強いのかもしれませんね。

 

とにかく、AIに対する捉え方は様々です。

 

「日本企業のAI・IoTの導入状況」が14.1%という話を前述いたしましたが、この中でもAIをどのように定義するかによってはその数値が大きくブレると考えられます。

 

例えばコールセンターやお客様の質問に回答するシステムとしてAI技術を活用したチャットボットの導入も至る所で進んでおり、「AIを導入している」と回答した企業のなかにもチャットボットの導入をもってそのように回答した企業が一定数いることでしょう。

しかし、AIを仮に「人間の様に見たり、聞いたり、話したりする技術」として定義した場合、現状のチャットボットがその定義にあてはまるかといわれると疑問符がつきます。

 

AIを導入するとした場合、「『AI』って自社にとって何?」という問いかけが必要になりそうです。

 

AIに関わる技術 ~ディープラーニングとCNN

AIに対する捉え方が様々であることの一つの要因に、アニメや映画など「文化的なコンテクストからAIがどのように語られてきたか」という点を挙げて説明しましたが、それ以外にも技術的にAIの実態を複雑にしている要因が存在します。

 

それはAIの領域として語られる様々な専門・研究分野が存在していることです。

 

近年耳にすることの多い「ディープラーニング(深層学習)」をはじめ、CNN(畳み込みニューラルネットワーク:Convolutional Neural Network)やRNN(再帰型ニューラルネットワーク:Recurrent Neural Network 時系列データの処理に使用されるアルゴリズム)、GANs(敵対的生成ネットワーク:Generative adversarial networks)などの技術用語や、画像認識や音声認識、自然言語(テキスト)処理、ビッグデータによるデータ分析・推論、ロボティクスなど、「AI」と一括りにしても語るべき領域が非常に多いため、複雑な印象を受けるのだと思います。

 

AIの概念を理解するために、ここでは近年のAIブームにおける中心的概念である「ディープラーニング」と「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)」を簡単に紹介してみます。

 

1.ディープラーニング(深層学習)と機械学習

<ポイント>

・ディープラーニングは機械学習のひとつ

・機械学習はコンピュータが法則性を分析し、学習するための技術

 

2012年に「ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)」という画像コンペでそれまで画像認識においてエラー率(低いほうがよい)26%台の攻防をしていたところに、当時としては驚異的な16%というエラー率をもって圧倒的勝利を収めたことで脚光を浴びた「ディープラーニング(深層学習:Deep Learning)」。

 

ディープラーニングはそれまで世界中の研究者がエラー率1~2%の幅で改善を繰り広げていた中、一気に10%も記録を更新しました。

さらに特筆すべきはそれまでの画像解析では職人技で機械に特徴を学習させ「正解」を教える必要があったところ、「自動で特徴を発見し学習する」ことで精度を上げていくことを可能としたことです。

 

Google DeepMind社によって開発され、世界のトップ棋士に完全勝利したことで注目を浴びた「AlphaGO」もディープラーニングを活用した技術です。

 

ディープラーニングは「機械学習」と呼ばれるコンピュータの学習のための技術のひとつです。

コンピューターに人のように振舞わせることを考えたとき、思考や行動のひとつひとつをプログラミングにより記述することによって実現しようとするとそれは現実的ではありません。

機械学習は開発者によるプログラミングではなく、与えられたデータに機械自身が法則性を見出し、トレーニングにより特定のタスクを実行できるようになるような技術のことを指すものといえます。

 

ひとつひとつは単純な構造を持つ関数を組み合わせることで表現力の高い「深い関数」を作り、そのパラメーターをデータから推定することで、コンピューターがデータ化された「事象」を「意味」として「理解」できるようになるというのがAIにおけるディープラーニングの果たす意義です。

 

2.ニューラルネットワークとCNN(畳み込みニューラルネットワーク)

<ポイント>

・ニューラルネットワークは入力データに特徴となる「重み」係数を与え、より確からしいデータを出力する

・ CNN(畳み込みニューラルネットワーク)は、入力データに対し、幾重もの畳み込み層(特徴を解析する層)を持つことで高精度の出力を可能とする技術

 

ニューラルネットワークとは、人間の脳を参考にして、神経細胞(ニューロン)の構造を計算機上に再現した技術で、ディープラーニングの中核となる概念です。

 

我々が普段「猫」を「猫である」と判断するとき、無意識下で色々な視覚からの入力データを元に判断しています。

色、大きさ、ヒゲの有無、目や耳の位置、毛並み、しっぽの長さ、生きて動いていること、その物体がいる場所、あらゆる経験則上の「特徴」を元に人は「猫」を「猫」だと判断していると言えます。

そのような無数の入力データに「重み」という係数を与え、入力データと特徴を表現する「重み」から、より確からしい結果を出力をするのがニューラルネットワークです。

 

(画像出典:『【図解】コレ一枚でわかるニューラル・ネットワークの仕組み』

 

ディープラーニングを実現する技術として共に語られることの多い「CNN(畳み込みニューラルネットワーク:Convolutional Neural Network)」は、とても簡単に言ってしまえば入力データに対し何度も「特徴」を解析する層(隠れ層)を設ける(畳み込む)ことでより高精度な出力を可能とする技術です。

 

技術的な説明としてはこちらのスライドが非常にわかりやすいので是非ご覧ください。

 

「画像認識」ひとつとっても、認識のためのタスクは数多くあります。

物体の検出、「犬」「猫」といったクラス(属性)の分類や行動認識といったあらゆる処理の中でCNNは中心的な役割を果たしています。

 

シスはAIとどのように向き合うべきか?

 

近年語られてきたAIがどのような概念で成長してきたか、多少イメージできたでしょうか。

 

前述のディープラーニングやCNNにしても、コンピューターの「認知」と「判断」に関わる技術であると言えます。

人でいうと「目」「耳」「口」などの感覚器や「脳」にあたる部分がコンピュータの中で発達してきていると、そのような評価ができるでしょう。

 

それでは、そもそも現時点でAIを企業が導入する意味はあるのでしょうか?

 

結論を言うと、私はあると考えます。

 

米国の大手コンサルティング企業であるMcKinsey&Companyは「ARTIFICIAL INTELLIGENCE THE NEXT DIGITAL FRONTIER?」において、積極的な戦略を備えた本格的なAI導入企業は、ほとんどのセクターで業界平均より3~15%高い利益率を生み出しており、将来的にはその利益率の差はさらに広がると予測しています。

 

いち早くPoCに着手し、AIが活躍できるフィールドを整えることで既に先行者として利益を得ている企業が存在する以上、導入しないことによる機会損失リスクは時間が経つにつれて大きくなり、それはAIを試行導入して失敗するリスクを軽く凌駕すると考えます。

 

とはいえ、成功のイメージもなく闇雲にPoCを繰り返すことはありません。重要なのはAIの現状を理解し、『彼ら』が活躍するフィールドを整えてあげることです。

ディープラーニングの技術は人間が気づかないレベルの共通点や法則を見つけ出すことが可能で、既に人間の能力を凌駕する力を発揮する分野も見つかっています。

うまくいけばAIは自ら効果を創出するだけのポテンシャルがあります。

 

さてここで、AIが上司の無茶振りに応えられるか考えてみます。

1.(少なくとも初めは)コストはかけられない

 →PoCからであれば低予算で着手可能(要件によりますが、数百万円程度~)

2.導入負荷が低い(業務全体を変更する必要がない)

 →人の業務の一部を肩代わりする役割が中心となるため、業務組み換え等の必要性は低い可能性がある

3.(できれば早期に)効果がでる

 →採用する学習方法や開発手法によりますが、適用業務によっては即時に効果が期待できます

 

「あんなこと・こんなことできるかな?」と思ったら、まずはAI導入の実績があるベンダー等に相談してみるのもよいかもしれません。

 

AIのビジネスへの導入事例 ~コンピューターの「目」としてのAI

さて、ここでは特にコンピューターの「目」としてのAI、つまり画像認識や文字認識に着目した企業のAI先行導入事例をまとめてみました。

 

皆様のアイデアの元になるような事例があれば幸いです。

 

RPAがコンピューターの「目」を持つとき

 

多くの企業においてAIが既に検証・導入されていることがイメージいただけたでしょうか。

 

今回はコンピューターの『目』として画像解析技術を中心に事例紹介いたしましたが、その他にもまだまだAIの可能性は広がっています。

 

例えば、我々が提供するRPAとの関連でも、AIに大きな期待がかかっています。

 

従来RPAは、基幹システムやExcelなどのアプリケーションへ人が入力していたデータを代わりにRPAが入力したり、WEBなどのデータを別のシステムなどに転記したりといった「作業」を代替する技術として力を発揮してきました。

しかし、多くの企業において問題となるのは「データ化」、すなわち企業で使用する情報をどのようにRPAが扱えるデータにするかといった点です。

紙の請求書の内容を基幹システムにRPAで入力させようとしても、紙の情報をExcelやCSVなどに転記し電子データ化しないとRPAが扱うことはできません。

その点がRPAで業務自動化を進める上での制約となってきました。

 

そこで近年ではRPA導入の次段階としてAI-OCRと呼ばれる技術を採用し、紙の帳票を文字データ化し基幹システムにRPAで入力させたり、システムで自動的に書類内容を判断(審査結果や本人確認結果などから審査結果や書類不備などを判断)するなどの開発事例が、特に書類処理の多い金融機関などを中心に増えており、弊社においても多くの事例がございます。(RPA×AI-OCRの弊社事例記事はこちら

 

RPAが進む次のフェーズとして、RPAベンダー大手であるAutomation Anywhere社は「コグニティブ・オートメーション」という言葉を用いてビジョンを掲げています。

IBM Watson 等の他の AI ソリューションと統合したプラットフォームを構築することで、コグニティブ、すなわち与えられたデータやプログラムによらず外界を「認知」し、非構造化データの理解や高度な判断などを可能とする「人を必要としない自動化」を目指すというものです。

これまで情シスの救世主だったRPAも、AIによるコンピューターの「目」を持つことで更なる進化を遂げようとしているのです。

 

これまで人が担っていた非定形的かつ困難な業務の代替可能性も、RPA単独で実現できる部分は限定的ですが、その他技術と組み合わせることにより、大きく変革を遂げることが可能です。

 

いかがでしょうか。

もし今既にRPAを導入済みであっても、AI等の活用により更に自動化の範囲が広がるイメージが湧いてきませんか。

 

弊社では実績豊富なコンサルタント・エンジニアが「RPA×AI×SI」によりお客様に更なる価値を提供します。

 

「AIであんなことしてみたいんだけど…具体的じゃないんだよなあ。」

そんな曖昧な状況からでも実現可能なソリューションをご提案させていただきます。

 

先端技術を用いた次なる「救世主」をお探しの方は、我々にぜひ一度ご相談ください。

 

参考文献等

・『AI白書2019』(著)独立行政法人情報処理推進機構  AI白書編集委員会

・『画像認識 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)』(著)原田 達也

『RPAの導入状況(2019年)/前編(キーマンズネット』

「日本企業のAI・IoTの導入状況」

・「2019 CIO Survey

・「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」総務省(平成28年)

深層学習の非常に簡単な説明

「ARTIFICIAL INTELLIGENCE THE NEXT DIGITAL FRONTIER?」

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