プロセスマイニングツール「Celonis」実証レポート
皆さん、お疲れ様です。
前回コラムではプロセスマイニングツールの機能と具体例をご紹介しましたので、今回はプロセスマイニングツール『Celonis』の無料トライアルを使用した実証レポートまとめました。
「Celonis」とは
まずは前回コラムでご紹介したプロセスマイニングツールのおさらいをしましょう。
プロセスマイニングツールとは最終目的である業務改善のため、現在業務利用している基幹システムや顧客管理システムなどのログデータから業務を把握するものでした。
「Celonis」はドイツのミュンヘンにて2011年に設立された会社で、2018年にはユニコーン企業との評価を受けている、プロセスマイニングに関する分析プラットフォームを提供するソフトウェアベンダーです。同社は、プロセスマイニング市場のリーダーポジションにあり、顧客数は2018年11月現在で200社以上。Siemens、KPMG、Deloitte、Bayer、VodafoneなどがCelonisを導入し、業務効率化を推進しています。主要な成功事例として、購買発注ルールや社内手続きのボトルネックを発見することによって、リードタイムを短縮、手戻りを削減したケースが多くあります。
※ユニコーン企業…企業としての評価額が10億ドル(約1250億円)以上の非上場のベンチャー企業
「Celonis」の機能
Celonisの機能として、大きく以下の3つに分類されます。
- イベント収集(Event Collection)
プロセス全体を把握するため、運用システムやイベントログから、事前に構築されたコネクタを使用してあらゆるシステムデータを大量に収集します。
- プロセス分析(Process Analytics)
イベントログからプロセスを可視化します。可視化できるプロセスの粒度は細かく、業務改善のための根本原因を突き止めるのに役立ちます。
- アクションエンジン(Action Engine)
プロセスのデータを入力し続けることで、適切な運用プロセスを起動することが出来ます。
これらの機能はプロセスマイニングツール全般に共通の機能なので、詳しくは実証レポートで説明していきたいと思います。
「Celonis」実証レポート
それでは実際にCelonisを使ってみましょう。Celonisには30日間の無料トライアル(言語は英語)が用意されているので、試用してみたい方は以下のURLから試してみて下さい。
https://www.celonis.com/get-started
まずはアカウントを用意し、ログインします。ログインするとこんな感じ。上部のタブの「Process Analytics」からトライアルを始めていきたいと思います。
Celonisのトライアルにはピザの注文プロセスのデモが用意されています。今回はこのデモを試します。
◯New Analytsis
その前に、「New Analytsis」からサンプル分析を作成します。
先ほど作成したばかりのサンプルを選択すると、以下のように複数のアプリを選択することができ、各アプリの視点からプロセスを分析することも可能です。
例えば「Process Overview」では、プロセスに関する主要な統計やHappy Path(最も頻繁に起こるアクティビティのフロー)を確認することが出来ます。
※今回のピザの注文デモでは、1日あたり12件の注文件数があり、イベント総数は95、プロセスの開始から終了までの平均スループットタイムは0日で、月単位でみると毎日10~14件ほど。
※Happy Pathの割合は全体の4.17%で、電話での注文からピザを作り始めることが最も多い。
このように、様々な角度からプロセスの分析結果を見ることが出来るのは素晴らしいですね。
余談が長くなりましたが、本題に入っていきましょう。「Analytz the Pizza Order Process」をクリックすると、いくつかの視点からのプロセス分析の結果が表示されます。1つずつ見ていきましょう。
◯Overview
1つ目はプロセスの概要です。
これは「Happy Path」という、最頻出するプロセスフローです。あくまで最頻出のフローであって、最適なフローではないので注意です。これにより、現状の業務を単純化して捉えることが出来ます。
右のスライダーを調節することで、頻出する確率が低いプロセスフローを見ることも出来ます。各ステップの使用頻度や各プロセスフローの頻出確率から、どのステップを改善すれば業務改善効果が多く得られるかを分析することが出来ます。
※右上のスライダーを動かすと、Happy Path以外の経路を見ることが出来る。全68件の注文の内、プロセスの開始は電話での注文(34件)が最も多く、他にはウェブサイトや店からの注文もあることが分かる。
※右下のスライダーを動かすと、スキップステップを見ることが出来る。例えば、注文を受ける以外にピザを焼き始める準備やピザを焼くことで、プロセスが開始する場合もあることが分かる。
◯Throughput Time
2つ目はプロセスの開始から終了までの経過時間のHappy Pathを確認できます。
※プロセス開始から終了までの平均時間は66分、最短は18分、最長は131分かかっている。
先ほどと同じように右のスライダーを動かすことで、HappyPath 以外のプロセスフローの所要時間を確認できます。
※今回の場合、電話での注文を受けてからピザを焼く準備をするまでに58分もの時間がかかっていること、このプロセスフローの出現確率は全体の3%程だということが分かる。
◯Throughput Time(Details)
こちらはスループットタイムの詳細です。各ステップからステップへの発生回数と経過時間が分かりやすく表示されます。
◯Rework Rate
最後に、これは1回のアクティビティに対し、複数回実行されているステップを確認できます。1回のアクティビティで複数回実行されているということは、出戻りが発生しているということです。出戻りが発生することで、不必要なコストと時間がかかっているため、出戻りが発生することが多いステップを改善することで効果的に業務改善することが出来ます。
※例えばピザの準備し始めるステップの出戻りが11回あり、これは全ステップで一番回数が多い出戻り
※上記の出戻りが多いのは各HappyPath からピザを準備し始めるステップにスキップしてくるから。
今回の場合、各ステップからの出戻りが多いため、まずは出戻りを最小限にするために注文フローを見直す必要があります。注文フローを見直す際には様々な注文パターンを考慮する必要があるため、Rework Rateの注文パターンを確認すると、ピザを焼き始めてからピザの準備し始める出戻りがあります。これは注文されたピザと焼き始めたピザが異なることで起きる事象のため、注文の伝達を確実に行うことで出戻りを無くすことが出来そうです。
「Celonis×RPA」の展望
上記でプロセスマイニングツール『Celonis』についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
Celonisの分析結果から、業務プロセスに関わる以下のような問題が発見できます。
・プロセスマイニングで得られた分析結果から、問題・課題を把握する
・でてきた問題・課題への対応策を検討する
・検討した対応策についての実行計画を立案する
Celonisを使用してみて感じたことは、業務プロセス可視化のレベルが高いことです。それぞれのプロセスの発生率や経過時間を一目で確認できるので、RPAの導入に必要な情報を確実に得ることが出来ます。RPA化をするにあたってよくある業務改善のために業務が増えることなく、時短かつ低コストで業務プロセスを可視化・分析することができるため、RPA化を効率的に行うことが出来そうですね。
さて、今回は「Celonis」をご紹介しましたが、プロセスマイニングツール第二弾は「ABBYY Timeline」をご紹介したいと思います。
同じプロセスマイニングツールでも、「Celonis」とはどのような違いがあるのか楽しみです。乞うご期待!
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